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名古屋高等裁判所 平成2年(行コ)17号 判決 1991年3月28日

名古屋市緑区大高町下塩田四八番地一

控訴人

エス・テイ・エンジニアリング株式会社

右代表者代表取締役

佐藤武

右訴訟代理人弁護士

三浦和人

名古屋市熱田区花表町七番一七号

被控訴人

熱田税務署長 小柳津一成

右指定代理人

天野登喜治

今野高明

金川裕充

間瀬暢宏

右当事者間の法人税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。」との判決を求め、

被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の主張は、次に付加する外、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する(但し、原判決四枚目表一行目の「徴収職員」を「当該職員」に改める)。

(控訴代理人の陳述)

一  現行税法は、申告納税制度を根幹としているところ、更正は、納税関係に関して、国の側からする強制的一方的な変更であるから、納税義務者に対してこれを周知徹底させる義務が、国側にある。また、更正に対する異議申立てに対してなされた異議決定についても、右と同様である。

本件の場合、本件謄本の送達が、まず書留郵便によってなされたところ、それが受領拒絶されたのであるから、被控訴人は控訴人に電話でその理由を問い合わせるかして、再度書留郵便によって送達すべきであった。仮に問い合わせをしないのであれば、国税通則法一二条四項、五項による交付送達をすべきであった。受領拒絶の理由の確認をしないまま、普通郵便で送達するというようなことは、全く不誠実な処置であり、法の予定していないところであって、許されない。

二  書留郵便すら受領拒絶されている本件においては、国税通則法一二条二項の推定規定は、働く余地がない。

(被控訴代理人の陳述)

一  控訴人の前記各主張は、すべて争う。

二  控訴人の予備的請求に対する被控訴人の本案前の主張

控訴人は本件各処分に係る税金を、すでに全部納付しているから、控訴人は、本件各処分に続く処分により損害を受けるおそれがなく、また、本件各処分の無効を前提として、これらに基づいて納付した税額相当額の返還を求めることができるから、控訴人には、本件各処分の無効確認を求める原告適格がない。

したがって、本件各処分の無効確認を求める訴えも、不適法として却下すべきである。

(証拠関係)

本件記録中の原審における書証目録及び証人等目録の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。

理由

一  当裁判所も控訴人の被控訴人に対する本件各訴えは、いずれも不適法としてこれを却下すべきものと判断する。

その理由は、次に訂正・付加する外、原判決の理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

1  原判決九枚目表六、七行目の「第一〇号証ないし第二〇号証」を「第一〇、一一号証、第一二号証の一、二、第一三乃至第一五号証の各一乃至三、第一六乃至第一九号証の各一、二、第二〇号証、」に、同一〇枚目表一行目の「者の氏名、」を「法人の名称、」にそれぞれ改める。

2  原判決一〇枚目裏四行目と五行目の間に、行を変えて次のとおり加える。

「控訴人は、本件謄本の書留郵便による送達が、受領拒絶されたのであるから、書留郵便によって再送達するか、交付送達をすべきであった旨、また書留郵便が受領拒絶された場合には、送達の時に関する推定規定の適用はない旨主張する。

しかしながら、国税通則法一二条一項によると、国税に関する法律の規定に基づいて税務署長が発する書類については、同法一四条による公示送達の場合を除いて、郵便による送達または交付送達の方法によるものとしているところ、その間に優劣をつけているわけではないし、また郵便による送達についても、書類の重要性に応じて、特に書留郵便によらなければならないとの指定をしていないのであるから、税務署長が、当初書留郵便で発送した本件謄本を控訴人によって受取り拒絶された後に、交付送達ではなく、郵便による送達の方法を選択をすること、その場合に、書留郵便によるか、普通郵便によるかの選択をすることは、その自由な裁量に委ねられているものと解せられる。ただ、送達の時に関して同法一二条二項の推定を受けるためには、同条三項により、その書類の名称、送達を受けるべき者の氏名または法人の名称、あて先、発送の年月日を確認するに足りる記録を作成して置かねばならないのである。

しかるところ、前記認定の事実によると、本件においては、右の説示に照らし、送達の時に関する推定を受けるについて、その要件に欠けるところはないといわなければならない。

この点に関する控訴人の主張は、独自の見解であって、到底採用することができない。」

3  原判決一三枚目表一行目の「また、」の次に「仮に本件各処分が無効であるとしても、」を加える。

二  そうすると、右と同旨の原判決は相当である。

よって、本件控訴を失当として棄却することとし、控訴費用の負担について行訴法七条、民訴法九五条本文、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野祐一 裁判官 喜多村治雄 裁判官 前原捷一郎)

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